Charlotte StilwellによるITIアカデミーラーニングモジュール「固定式歯科補綴装置の設計原則」へようこそ。
日本語翻訳協力者: 吉村 麻里奈
全てのインプラント補綴装置の設計は、補綴計画に基づいている必要があり、関連する特定の設計条件に対処する必要があります.殆どのインプラント固定式補綴装置(またはFDP)の設計には共通するいくつかの要件があり、それらを論理的なシークエンスに配置することが役立ちます.最初のポイントは、FDPのタイプと外形の選択です.次のポイントは、支持方法の選択です.それに追従して審美性、機能、強度などの条件に必要な外部及び内部構造を検討します.このモジュールでは、これらの各設計ポイントを順番に検討します.基礎のモジュールに基づき、より詳細な個別の学習モジュールが構築され、FDPの修復材料の選択、アバっとメントの選択、およびサポートするインプラントの構成に対応しています.
このモジュールを完了すると、補綴装置のタイプとそのユニットの構成、支持方法の選択、外部構造の表面性状、および内部構造の観点から、FDPを設計するための原則を説明できるようになります。
まず、最初に考慮すべき設計上のポイントは、必要な補綴装置のタイプを決定することです.この要件は、FDPが前歯部用か、臼歯部用かで異なります.同じ様に、設計は単一ユニットと複数ユニットで異なります.二歯以上のスペースがある場合は、カンチレバーFDP、シングルユニットなど、構造によりオプションも異なってきます.フルアーチの場合、ワンピースか分割式かが選択されます.通常、マルチユニットの構成は、補綴計画と臨床症例の特定要因によって決まります.
インプラント治療が進歩するにつれFDPを簡素化するという傾向が明確に現れてきました。これは、ロングスパン補綴装置をシングルユニットとショートスパンFDPに分割する事に顕在化します。その結果初期構造がシンプルになり、継続的なメンテナンスも簡易になります。例えば、シングルユニットや、ショートスパンのFDPを構築し、パッシブフィットを得ることには、それ程高い技術を要求されません。臨床医は、補綴装置の合併症が発生した際に、より簡易的な改善策を計画できます。また、分割設計の他の利点として、審美的改善と、口腔衛生管理の容易さがあります。
より単純なFDPを制作する目的として、特に、近遠心的距離の縮小されたケースで、隣接するインプラントの代わりに2ユニットのカンチレバー補綴装置を使用する傾向にも繋がりました。公表されている文献の中では、従来の天然葉支持型より、インプラント支持型カンチレバーFDPの方が良好に機能した事を示しています。
FDPを簡略化するもう一つの方法は、サポートするインプラントの総数を減らすことです。欠損歯一本にひとつのインプラントを配置する方法は、主に、カンチレバー方式又は、従来のマルチユニットFDP設計に置換されました。ここで供覧する前歯のケースでは、中切歯と側切歯部位に、様々な構成で配置された2本のインプラントを使用する事で、隣接するインプラント間の歯間乳頭を再現する際に生じる審美的障害を回避しています。インプラント補綴装置構成の原則のついては、関連するITIアカデミーのラーニングモジュール「固定歯科補綴物のインプラント構成」で詳しく説明されています。
FDPの分割と単純化にはいくつかの例外があります。6本未満のインプラントでサポートされるフルアーチ型の補綴装置では、分割式が難しく、通常は一つのパーツとして構成されます。ワンピース型補綴装置のインプラントは、下顎骨のアーチに追従する為、オトガイ孔間領域に配置する必要があります。したがって、後方の臼歯部がにカンチレバーが必要になる場合があります。
ショートインプラントや、骨移植部位に配置されたインプラントで支持する場合、補綴装置の連結を検討する必要があります。これらの状況では、補綴装置を連結することで、インプラントの結合と相互の支持が提供されます。特に、単一ユニットの副子固定は、歯軋りのパラファンクションが確認されている場合、又は、以前のインプラントで咬合負荷に関連する失敗の既往がある患者に推奨されます。
補綴装置の構成:主要な学習ポイント::ロングスパン補綴装置は、多くのケースで、ショートスパンやシングルユニットに分割することで、構造とメンテナンスを簡素化できます。2ユニットカンチレバーFDP、及びその他の簡略化された構造の利点には、費用削減と軟組織の審美性向上が含まれます。カンチレバー設計は、支持するインプラントの位置に制限が多いフルアーチの補綴装置によく使用されます。ショートインプラント、骨移植部位に配置されたインプラント、歯軋りのある患者には、補綴装置のユニットを副子固定する事を検討する必要があります。
インプラント支持型FDPには、2つの異なる保持方法の選択肢があります。一つは、従来の歯冠補綴装置と同様、セメント固定式の方法です。もう一つは、スクリュー固定式です。両方とも、利点と欠点があるため、その適応症も異なります。セメント固定式対スクリュー固定式の適応に関して明確なガイドラインが発展しました。これらは、次のスライドに示されています。
セメント固定式の利点の1つは、従来のFDPと同様に、補綴装置の構造が単純であることです。ネジのアクセスホールがないため、FDP全体で使用される材料の大きさを簡単に制御できます。最後に、インプラント軸方向の並行的な配置がそれ程精密になりません。但し、余剰セメントの残留が非常に重大なリスクであるというエビデンスが増えており、その存在がインプラント周囲炎や関連する合併症を惹起する可能性が高いという証拠もあります。何らかの問題でセメント固定式上部構造を除去する場合、この手順を簡易にする方法は殆どありません。
利点欠点のリストに基づくと、セメント固定式を選択する傾向:セメントマージンが粘膜レベル以上のFDP:補綴装置とインプラントの配置によりスクリュー固定式の使用が困難な場合(例えば、適切な材料の厚みを確保する為にスクリューホールを避けたい場合):より単純な補綴計画が示されている場合
セメント固定式を選択する場合、以下の点を考慮する必要があります。第一に、余剰セメントの除去を容易にする為、セメントマージンが粘膜レベルかそれに近い位置に来る事を確実にする為、カスタムアバットメントが必要なケースがあります。天然歯の補綴前処置と同様にアバットメントは保持力を確実にする為、適切な高さとデザインが必要です。別の考慮事項としてFDPの長さがあります。結合されるユニットの数が増えると、再介入は難しくなり、余後が予測しにくくなっていきます。
スクリュー固定式の場合、明確な利点として再介入の容易さと、セメントの使用を回避できる事が挙げられます。最も重大な欠点は、スクリューホールが臼歯部補綴装置咬合面の中央、前歯部補綴装置舌側、口蓋側面に来るように補綴計画を立案する必要性がある事です。アクセスホールの露出は審美的問題になる事があります。また、スクリューの緩みが起きる可能性に加えて、スクリュー固定式ではベニアセラミックスのチッピング発生率が高いことも示されています。
スクリュー固定式を選択する要素として、ブラキシズムによる合併が高い患者の場合、容易に取り外しができる事です。ロングスパンやフルアーチFDPなど複数のユニットが結合されている場合も、スクリュー固定式が強く指示されます。セメント除去が困難な粘膜下マージンの場合もスクリュー固定式が指示されます。
スクリュー固定式が提案されている場合、以下の考慮事項が関連してきます。まず、インプラントとスクリュー挿入軸が確実に整列する様に、インプラントの配置を補綴主導的に決定する必要があります。方向性の一致は、審美的結果を得る為にも重要です。頬側咬頭尖端への露出など、アクセスホールの不適当な位置によって審美的に妥協を求められる可能性があります。また、アクセスホール周囲の適切な材料の幅や厚みを確保する為に適切な配置が必要です。スクリュー軸方向にフレキシブルな角度を備えた特殊なドライバーやアバットメントが利用できる様になり、インプラントの配列に柔軟性が生まれています。これらのコンポーネントにより、位置不良のインプラントを補綴的に補正する事ができます。再介入の容易さとセメント関連の生物学的合併症の回避、両方の観点から、セメント固定式に対するスクリュー固定式の強力な利点を考慮すると、これらのオプションは必要に応じて検討する価値があります。但し、依然として臨床医は最適なインプラントの配列を目標にする必要があります。
保持方法・必要な学習ポイント:セメント固定式FDPは、補綴装置とインプラント軸方向が一致しない場合、又はアクセスホールを回避する事が望ましい場合に指示される。余剰セメントはインプラント周囲炎と関連している。歯肉縁上にあるカスタムアバットメントはセメント固定式FDPで指示される。セメント固定式FDPの再介入は、特に長期経過症例では余後の予測が困難になる。スクリュー固定式FDPでは余剰セメントの問題点を回避し、再介入も容易になる。これは、ブラキシズムの様なリスクが高いケースで有利である。スクリュー固定式では、インプラントとスクリューの軸方向を並行に合わせる必要がある。
FDPFDP外側面について考慮すべき重要な設計バリエーションが幾つか挙げられます。外部設計は、FDPの種類と部位によって異なります。前歯部と臼歯部、シングルとマルチユニット、インプラント支持部、ポンティック部、及び最適な環境のあるケース、妥協が求められるケースがあります。
設計上の考慮事項として、ベルサーらの審美領域の定義には、それがスマイル時に見える状況、患者にとってその他の審美的重要性がある場合、補綴装置の審美性を考慮するべきとされています。その他の考慮事項として、補綴装置が満たすべきなのは、発声、咬合、咀嚼の機能条件です。FDPの設計では、患者の日常的なケアに加えて、専門的なモニタリングやインプラント周囲のメンテナンスにも効果的な口腔衛生状態を確保する必要があります。
審美的な考慮事項は、硬組織因子と軟組織因子の両方を含みます。最適な審美的結果は、欠損歯及び隣接する歯の自然な外観を模倣する事を目的にすべきです。2009年にBelserらが提示したwhite esthetic score やWESのパラメータは、目標とする審美的デザインの要素として使用できます。これらには、既存の歯列に溶け込む最適なインプラント補綴装置の形状、輪郭、ボリューム、表面性状が含まれます。特に前歯部における重要な審美的要因は、FDPのエマージェンスプロファイルです。2つの臨床画像は、正しい補綴装置のカウントゥアがインプラント周囲組織をどのようにサポートし、それによって反対側の天然歯を模倣するエマージェンスプロファイルを達成するかを示しています。審美的要因については、ITIアカデミーのラーニングモジュール「インプラントでサポートされる固定歯科補綴装置の審美的計画」で詳しく説明しています。
臼歯部FDPでは、同じ審美的スコアのパラメータが使用されますが、FDPがダイレクトに露出されない場合審美的な妥協範囲が広がる可能性があります。審美的妥協に対する患者の許容範囲も同様に大きくなる可能性があります。形態、輪郭、及びボリュームに関する頬側面観のパラメータは、審美的結果にとって最も重要です。この臨床例に見られるように、前歯部と同様インプラント周囲のエマージェンスによる周囲組織のサポートが重要です。硬組織及び軟組織の欠損状態では、歯根露出ケースに似た、より長いネック部で設計される場合があります。または、ピンクセラミックで置換される場合もあります。
FDPの外部形態も機能の復元に貢献します。補綴装置に対する患者の適応条件を最小限に減らす為には、周囲歯列のカウントゥアと大きさを出来るだけ模倣することが賢明です。これには、会話や嚥下に関連する表面形態が含まれます。これらの臨床例は、反対側の天然歯に非常に類似した切縁と口蓋の表面形態を示しており、それによって発話や咬合を阻害する可能性が低くなります。同様に、これら2つの上顎小臼歯部インプラントクラウンの輪郭と配列によって、発話と快適さの点で機能的順応が容易になります。
補綴装置設計の重要な機能的要因は咬合です。適用可能なガイドラインでは、インプラントと上部構造に同軸の荷重方向を付与する事を推奨しています。これはインプラントの軸に沿って、上部構造の中央部に咬合接触がかかる事で実現されます。中心部の接触点周囲に自由度を設定し、天然歯より平坦な咬合面形態を付与する事で、側方荷重が回避されます。歯軋りやセラミックスのチッピングや破損の既往がある場合、金属性の咬合面が強度を高め、合併症のリスクを軽減します。このトピックは、「固定式インプラント補綴装置の咬合」というタイトルのITI Academy学習モジュールで詳しく説明されています。
もう一つの外部設計における機能的考慮事項は、食品の咀嚼中の歯肉組織の保護です。天然歯の自然な形態はこの機能に適応しています。各天然歯の解剖学的正中線、クラウンの最豊隆部は、咀嚼中に食塊を歯肉組織に直接当たらない様逸らす役割を果たします。これらの2つの臨床例で実証されているように、この形態はインプラントFDPにおいて模倣されるべきです。前の例では、インプラントクラウンは、インプラント周囲の粘膜を保護するために、反対側の切歯の頸部の輪郭を模倣しています。臼歯部例では、下顎のインプラントクラウンが上顎天然歯のカウントゥアを模倣しています。
3つ目の外部設計の考慮事項は、口腔衛生状態を維持する清掃性です。インプラント周囲の組織及びインプラント本体の良好な状態を維持する為に、患者の日々の効果的なセルフケア、専門的なモニタリングやメインテナンスが可能な状況を整える必要があります。この論文では、プラーク除去の為の到達性を妨げる補綴形態がインプラント周囲炎を惹起する事を報告しています。従って、適切な到達性を備えたFDPを設計する事は、インプラント周囲炎の予防の為に考慮すべき補綴装置のリスク管理です。これらの図は、粘膜からのエマージェンスプロファイルと、隣接歯間部のコンタクトに至るprogressive tapers と、suboptimal exaggerated contoursを示しています。
FDPの全ての側面形態は、患者と専門家の両方のメンテナンスにおける到達性を容易にする必要があります。一般的なルールとして、エマージェンスプロファイルから解剖学的正中線までのコンタクト部はバイオフィルムの除去と専門家による精密検査を可能にする為滑らかなテーパーを付与する必要があります。マルチユニットFDPのポンティック部も同様なカウントゥアを描く必要があります。フロスの挿入と結合部への歯間ブラシの容易な到達性が求められます。フロスが表面全体に接触できる様に、ポンティックの軟組織接触面は平滑、またはオベイド形態でなければなりません。
実際に、滑らかなテーパーのエマージェンスプロファイル歯天然歯のカウントゥアと解剖学的に類似しています。臨床例は、上顎左側第一大臼歯部のインプラントFDPです。天然歯の自然なテーパーとインプラントFDPの類似点に注目してください。また、FDP両側の小さな隣接歯間部の殻形空隙に注目してください。これによってフロスとブラシの挿入が容易になります。歯肉のリモデリングにより、他の部位にも同様なスペースが存在しています。同じ原則がこの単一の大臼歯部に適用されています。頬側及び口蓋側、一般的形態の全体が、スリムなテーパー状のエマージェンスプロファイルを有します。
良好な清掃性を得る為のカウントゥアの設計には、いくつかの例外があります。殆どの例外は補綴装置の審美的要因に関連しており、主にエステティックゾーンで発生します。その他の例外は、前述の機能要件に関連します。FDPカウントゥアは、会話、咬合、咀嚼中の食塊からの保護を促進する必要があります。 この画像は、2つの上顎側切歯FDPを示しています。これらのカウントゥアは、移行部のインプラント周囲粘膜をサポートし、審美的結果を得る為に重要です。この図は、粘膜移行部の補綴支持を示しています。同様に、この小臼歯部のFDPは頬側のカウントゥアを誇張しており、審美的に決定された歯肉縁でインプラント周囲の粘膜をサポートしています。
外部表面、主要な学習ポイント:FDPの外部設計の審美的考慮事項には、形状、カウントゥア、ボリューム、テクスチャ、のwhite esthetic score のパラメータに加えエマージェンスプロファイルが含まれます。外部設計は、インプラント周囲粘膜の保護を提供しながら、音声、嚥下、および咀嚼の機能要件を満たす必要があります。咬合設計は、軸方向荷重を与える必要があります。プラーク除去を妨げる補綴装置のカウントゥアはインプラント周囲炎の危険因子です。バイオフィルムの除去を容易にするため、補綴装置は滑らかなテーパーを描くべきです。マルチユニット補綴装置の粘膜面と結合部はフロスと歯間ブラシを効果的に使用できるカウントゥアを描く必要があります。
補綴装置の構成、保持方法、及び外形が決定された後、内部構造は使用される補綴マテリアルの適切で十分な寸法を確保する様設計されます。内部構造は、これらのマテリアルの審美性だけでなく、強度と耐久性にとっても重要です。これらのパラメーターが達成される為には、最終設計にいくつかの変更が必要になる場合があります殆どのケースで、内部構造の設計はラボで行われますが、臨床医がそれを評価出来る事が重要です。第5回ITIコンセンサス会議からの明確かつ具体的な推奨事項では、補綴設計を支持した臨床医はCAD/CAM設計の評価に関与する必要があると述べています。
内部構造は、コンビネーションかモノリシックのいずれかに分類できます最も一般的な内部構造は、ベースがベニア材で覆われているコンビネーション構造です。コーピング部分はFDPに強度を付与し、最も一般的なのは金属性です。コーピングはセラミックスやレジンなどの審美材料で覆われます。二酸化ジルコニウムセラミックスはジルコニアとしても知られていますが、その強度が高い為にコーピング材として人気があります。この材料の不透明性は、より透明なセラミックスで審美的領域に適応させる必要があります。
モノリシック材料の中で、全ての金属は強度が重要となるケースに適用できます。金属性のモノリシックFDPでは、咬合面のメタルはベニア構造の審美性との機能的妥協点となります。最近では、既成のセラミックブロックから削り出されたモノリシック構造が審美領域外で使用される様になり、更に表面のステイニングによりFDPの審美性が向上しています。「FDPのための歯科材料の選択」に関するITIアカデミーラーニングモジュールでは、これらのオプションについて詳しく説明しています。
マルチユニットFDPは通常、シングルクラウンと同様の内部構造を持っています。審美領域では、最適な結果を達成するためにベニアリングが必要です。これは、マルチユニットFDPの最も一般的な構造です。ジルコニアまたは二ケイ酸リチウムセラミックスをベースにしたオールセラミック構造がショートスパンFDPで利用できるようになりましたが、歯ぎしりやその他の高い咬合負荷のケースでは注意が必要です。これらの場合、金属フレームワークがより良い解決策になります。
シングルユニットFDPとマルチユニットFDPの主な違いは、ユニット間の接続部です。これらの接続部は、FDPとベニア材をサポートするのに十分な強度と適切な寸法が必要です。これらの接続部の最小距離は使用する材料の強度と剛性に寄与しています。接続部の最も重要な寸法は、occlusogingival thicknessであり、咬合負荷やパラファンクションに耐える為の強度が必要です。最後に、これらの接合部の設計は、特に口腔衛生的清掃性の観点から、FDPの外形を考慮に入れる必要があります。
下部構造とベニア材のコンビネーション構造では、適切な審美性と強度を確保する為に、ベニア材の厚みが必要になります。ベニアリングセラミックのチッピングと破壊は、インプラントFDPの特徴として記述される頻度の高い合併症です。ベニア材料の適切な寸法を確保するための最も予見性の高い方法は、最初に実際の、又は仮想のワックスアップを介して最終的な補綴物を完全な形態に計画し、次にカットバック技術を使用することです。この補綴的に決定されたワークフローでは、ベニア材の最適な厚さを最初にカットバックする事で、必要な支持が下部構造に存在することが保証されます。原則として、ベニア材には1.5〜2 mmの厚さが必要です。ワックスアップによってベニア材と下部構造の両方の寸法が不十分な領域では、下部構造のみを優先して、ベニアを省略できます。たとえば、この臨床画像に見られるように、最適な清掃性のためにスリム化されたエマージェンスプロファイルが望ましい場合があります。補綴ユニット間の隣接歯間接続部の見えにくい側面からベニアリングを省略することも適切な場合があります。すでに述べたように、歯ぎしりのある患者の場合、咬合面からベニアを省略することをお勧めします。
綿密にプランニングにも関わらず、インプラントの軸方向が予定より理想的でない場合があります。その結果、スクリューへのアクセスが悪くなる場合があります。理想的な位置は、前歯部FDPの基底結節、臼歯部FDP咬合面中央部です。場合によっては、結果的に生じる内部構造の問題点を解決する為に、セメント固定式を選択することがあります。但し、スクリュー固定式がより適用だとされる場合は、角度補正する特殊なドライバーやアバットメントを使用します。これらのコンポーネントは配列の問題を克服する様に設計されており、その重要性を評価される必要があります。
内部構造、主要な学習ポイント:シングルユニットの補綴装置は、一般的には、前装またはモノリシックセラミックで構成されています。マルチユニットの補綴装置は、通常、金属の内部構造と前装材で構成されています。オールセラミック補綴装置はショートスパンケースにのみ推奨されます。咬合負荷が高い場合は、金属咬合面を備えた前装構造をお勧めします。マルチユニット補綴装置の結合部は、咬合力に耐えられる適切な寸法である必要があります。製作中のカットバックテクニックにより前装材の適切な厚みが確保されます。インプラントの軸方向が理想的でない場合、特殊なアバットメントとドライバーによりスクリューリテインの角度補正ができます。
固定式歯科補綴装置の設計原則、モジュールの概要:長いスパンを分割化し、インプラントの数を減らし、カンチレバーを使用することで、FDPの構造とメンテナンスを簡素化できます。補綴装置とインプラント体の軸方向が一致しない場合は、セメント固定式が指示されます。スクリュー固定式は、余剰セメント関連の生物学的合併症の防止に関して、セメント固定式と比べて大きな利点があります。
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