Sven MühlemannによるITI アカデミーラーニングモジュール「固定性歯科補綴装置のためのインプラント構成」へようこそ。
日本語翻訳協力者: 上妻 渉
インプラント歯学を行なっている臨床医は、単独歯欠損から数本の欠損がある欠損部、完全無歯顎まで、様々な臨床状況に直面しています。完全な治療計画が立案されると、インプラント支持型補綴装置に対して様々な設計構成が可能となるかもしれません。それぞれの補綴装置設計には長所と短所があります。補綴設計は、適切な寸法のインプラントを使用して適切な本数のインプラントを正しい補綴的な位置に埋入するのを確実にするために臨床的状況に基づいていなければなりません。
このITI Academy Moduleを完了すると、あなたは単独歯欠損、短い欠損スペース、広い欠損スペース、そして無歯顎において固定性インプラント補綴装置の設計構成を認識できるようになります。
まず、単独歯欠損に焦点を当てます。単独歯欠損のインプラント補綴は非常に予知性の高い長期経過を伴う治療オプションです。インプラント部位の臨床的な状況と部位に応じて、臨床医は適切な寸法とタイプのインプラントを選択しなければなりません。
基本原則として、インプラント埋入前に、近遠心的なスペースを常に注意深く評価する必要があります。まず、スペースの幅を測定しなければなりません。そして次に、天然歯-インプラント間の最小距離を考慮する必要があります。天然歯-インプラント間の最小距離はインプラントのショルダー部において少なくとも1.5mmなければなりません。これらを考慮すると、隣在歯間の軟組織の見え方に最適な結果が保証されるでしょう。
次に、近遠心および頬舌的寸法を計測することで、適切なインプラントの直径を選択できます。頬側および舌側の骨壁の適切な幅を維持することも重要です。直径の小さいインプラントは適応症が限られているため、それを考慮しなければなりません。理想的に補綴的に決定されたインプラントポジションが依然として達成できる場合、小さい直径によって骨移植術を回避できる可能性があります。標準またはワイド径のインプラントは臨床状況に基づいて選択可能です。2つの異なるインプラントのタイプをここに示します。ここに示されている2つのインプラントタイプの総称は、ワンピースインプラントとツーピースインプラントです。次に両方について詳しく説明します。
骨に埋入される時、ワンピースインプラントは口腔内へと伸びる粘膜貫通部を持ちます。粘膜貫通部はインプラントの一部として製造されており、固定式補綴装置のプラットフォームとエマージェンスプロファイルが組み込まれています。右側のインプラントはフレア形態のエマージェンスプロファイルとインプラント上に設計された補綴装置のプラットフォームを示します。これはソフトティッシュレベルインプラントと呼ばれます。
ツーピースインプラントは骨レベルで止まるように設計されています。エマージェンスプロファイルと補綴装置のプラットフォームはアバットメントによって確立されています。これによってアバットメントの選択に基づいて補綴装置の柔軟性が高まります。寸法が比較的小さい部分では、これが有利な場合があります。審美領域では、頬粘膜の厚さが減少した部位に歯の色のアバットメントを選択することも可能です。
前歯部領域では、ワンピースの粘膜貫通部を持つインプラントデザインの固定されたネック部の設計は、顔面の利用可能な寸法と矛盾する可能性があります。この場合、ツーピースタイプのボーンレベルデザインの補綴プラットフォームとエマージェンスプロファイルの相対的な柔軟性がより良い選択になる可能性があります。さらに、ワンピースデザインのティッシュレベルインプラントの金属色の粘膜貫通部によって、上顎左側中切歯のインプラント補綴装置のこの臨床画像とX線画像に見られるように、軟組織の上にある灰色がかった変色に繋がる可能性があります。したがって、ツーピースタイプのインプラントのボーンレベルデザインには審美的な利点がある可能性があります。
単独歯のスペース、重要な学習ポイント:単独歯スペースにおいて、適切なインプラントの寸法を定義するためにスペースを評価する必要があります。インプラントの種類は、臨床状況によって異なります。
次に、短い欠損スペースを見ていきます。単独歯スペースについて説明したインプラントの寸法と種類に関する考慮事項は短い欠損スペースにも当てはまります。さらに、短い欠損部には最も適切なインプラントポジションを選択するという課題があります。隣接する2つの歯が欠損している場合、固定性インプラント補綴装置には、スペースの幅に応じて2つの異なる構成原則があります。十分な近遠心スペースがある場合は、2本のインプラントを埋入できます。十分な近遠心スペースがない場合は、1本のインプラントを1つの位置に埋入し、正しいインプラントの位置を慎重に定義する必要があります。
基本原則として、インプラントを埋入する前に近遠心スペースを常に注意深く評価するべきです。まず、スペースの幅を測定する必要があります。天然歯-インプラント間距離と隣接する2つのインプラント間距離の最小限の距離を考慮するべきです。いくつかの研究では、2つの隣接するインプラント間距離は、インプラント間の骨頂を維持し、口腔衛生のために補綴装置間に十分なスペースを確保するために、少なくとも3mmなければならないことを示しています。インプラント-天然歯間の最小限の距離は少なくとも1.5mmなければなりません。これらの考慮事項によって、間の軟組織の外観に最適な結果が保証され、インプラントがお互いに近くなるリスクを回避できるでしょう。
これらの測定値に従って、適切なインプラントの直径が選択されます。前述したように、直径が小さいインプラントは考慮すべき適応症が限られています。標準またはワイド径のインプラントは、臨床状況に基づいて選択できます。次のスライドでは、前歯部と臼歯部への構成原則について説明します。
ギャップが前歯部領域にある場合、2つの単冠を備えた2本のインプラントが検討可能な選択です。ただし、無歯顎領域の近遠心スペースは慎重に評価すべきです。インプラントの直径は、クラウンの大きさに応じて選択する必要があります。これはつまり、中切歯には通常標準径のインプラントを選択しますが、側切歯には通常、直径の小さいインプラントを選択するということです。インプラントの直径を小さくすることによって、天然歯-インプラント間もしくは隣接するインプラント間の推奨される最小限の距離を達成できます。
示されている臨床状況では、近遠心スペースは中切歯に対する標準径のインプラントと側切歯に対する径の小さいインプラントの埋入を可能にするのに十分でした。両方のインプラントはスクリュー固定で補綴されました。選択された設計の利点は、補綴装置のセグメンテーションです。
カンチレバーを伴う固定性補綴装置(略して固定性補綴装置)で補綴された1本のインプラントを使用した補綴設計は、近遠心スペースが限られている場合、前歯部領域において優れた治療選択です。補綴的観点からすると、インプラントはより大きなボリュームのクラウンの下に埋入されるべきです。これによって、カンチレバー部が減少し、結果として生じる軸外力が低くなります。さらに、インプラントとアバットメントの接続部の寸法が大きくなるため、カンチレバーでクラウンを支持するのに適しています。大きいボリュームのクラウンの下の骨量が十分ではないなら、最初にその部位を再建してからインプラントを埋入することを推奨します。外科的観点からすると、インプラントは、初期固定を確保するためにより大きな骨量の部位に埋入すべきです。インプラントの位置は、これら全ての臨床基準を考慮して慎重に選択するべきでしょう。
この臨床例では、2本の隣接するインプラント埋入を可能にするのに近遠心スペースが十分ではありませんでした。側切歯を補綴するために近心カンチレバーを伴うクラウンを支持するために犬歯に標準径のインプラントが埋入されました。
前歯部における連続2歯欠損は、しばしばある歯科インプラント治療で管理するのが最も難しい審美的状況の1つです。Tymstraとその同僚の研究では、2つのインプラントクラウンを使用したか、1つのクラウンと1つのカンチレバーを備えた1本のインプラントを使用したかに関係なく、連続2歯欠損の場合は乳頭が常に損傷していました。これは歯間骨頂の吸収によって乳頭が収縮するためです。
この症例は、連続2歯欠損という審美的な妥協を示しています。中切歯に対して標準径のインプラントを埋入し、遠心カンチレバーを伴うクラウンを支持して側切歯を補綴しました。欠如した乳頭はピンクのセラミックを用いて補綴しました。この症例は、1本のインプラントを使用することでカンチレバーの固定性補綴装置を支持する1つの大きな利点も示しています。この構成によって隣接部にピンクのセラミックを追加して欠如した乳頭を補うことができます。次の項目では、臼歯部領域での短いギャップを持つ様々な臨床状況について臨床例を使用して説明していきます。
臼歯部領域における2つのシングルクラウンに対しての2本のインプラントでの構成では、次のような評価が行われます。最初に、スペースの近遠心幅を測定し、もっとも近いミリメートルに切り捨てます。次に、この幅から6 mmが差し引くことで、インプラント-天然歯間の安全な距離である1.5 mmとインプラント間の3 mmを確保できます。次に、残りの距離を使用して、2つのインプラント頚部の直径の可能な組み合わせを特定します。
インプラントと直径の組み合わせの例をこの表に示します。13 mmのギャップがある場合、隣在歯までの安全な距離とインプラント間の距離の6 mmを差し引くと、最終的な距離は7 mmになります。これは、2つの3.5 mmの小さい径のインプラントには十分です。この組み合わせは、上顎左側小臼歯2歯欠損が直径3.5 mmと5 mmの2つのインプラントによって補われたこの臨床例で見ることができます。16 mmのギャップでは、直径5 mmのインプラントを2本使用できますが、一方18 mmのギャップでは、直径5 mmのインプラント1本と直径6.5 mmのインプラントを1本使用できます。小さい直径のインプラントについては、連結の必要性に関する製造会社の指示を参考にするとよいでしょう。
この臨床状況では、上顎第一大臼歯と犬歯の間に14 mmのギャップがあります。インプラント-天然歯間の最小距離1.5 mmとインプラント間の最小距離3 mmを14 mmから差し引いた時、2本のインプラントの直径の合計に8 mmの距離が残ります。頚部の直径が3.5 mmの径の小さいツーピースインプラント1本と標準径の4.1 mmのツーピースインプラント1本は、利用可能な8 mmのスペースに安全に収まります。これらの2つのインプラントは、別々の単冠補綴装置として補綴されています。
スクリュー固定式固定性補綴装置とカンチレバーを備えた1本のインプラントの治療オプションは、2本のインプラントを埋入するのに十分な近遠心スペースがない場合の代替治療法です。このケースでは、近心カンチレバーを伴う2ユニットの固定性補綴装置が優先です。例えば、これは第一小臼歯を補うために近心カンチレバーを持つ第二小臼歯が可能性としてあります。この構成原則は、ポンティック部において十分な骨量がない場合にも用いられます。臨床例に示されているように、遠心カンチレバーを伴う2ユニットの固定性補綴装置を使用することができます。遠心カンチレバーは、ポンティック部である2つ目の歯の部位の骨量が不十分な場合に機能的なユニットを増やすために使用されます。この状況は、上顎洞底の位置や骨幅の不足が原因で起こる可能性があります。システマティックレビューでは、RomeoとStorelliはカンチレバーを伴う補綴装置を使用するとテクニカルな併発症のリスクが高くなると報告し、欠点であることを示しました。
SAC分類によると、3歯欠損の無歯顎部位は短い欠損部位として定義されています。次のスライドでは、臼歯部領域におけるこのようなギャップへの設計原則を示します。
臼歯部領域で3歯欠損の場合、2本のインプラントにポンティックを伴う従来の3ユニット固定性補綴装置が1つの設計オプションです。第一大臼歯部では、インプラント埋入のためにサイナスリフトが必要になる場合があります。
これらの症例写真では、インプラント第一大臼歯と第一小臼歯部に埋入され、スクリュー固定式固定性補綴装置を指示しています。3ユニットの固定性補綴装置(固定性補綴装置)をサポートする2本のインプラントというこの構成は、3歯欠損に対する最適な解決策であると考えられています。
臼歯部領域での別の代替治療法は、カンチレバーを伴う固定式補綴装置です。この設計の主な適応症は、水平的な骨造成やサイナスリフトのような骨造成術を回避することです。その結果、患者に必要な手術が少なくなるため、罹患率が低下します。一方で、すでに述べたように、カンチレバーによる補綴の技術的な併発症のリスクが高いことが報告されており、咬合面形態の設計には注意が必要です。
別の可能な解決策は、臼歯部領域に3本のインプラントを設計することであり、これによって、3つの単冠もしくは3つの連結冠を作製できます。3本のインプラントを埋入する最も一般的な理由は、骨高径の制限のためにショートインプラントしか埋入できない場合や、患者の希望や医学的問題によって骨造成を回避する必要がある場合です。システマティックレビューによると、最大長が8mmのショートインプラントは、8mmより長いインプラントと同じ累積残存率を示します。この設計では、インプラント間およびインプラント-天然歯間の最小距離を考慮しながら、3本のインプラントを埋入できるように十分な近遠心スペースが必要です。2本のショートインプラント上のポンティックを伴う3ユニット固定性補綴装置は更に別の選択肢となっています。どちらの選択をするにしても、特に長さが8mm未満のインプラントを検討している場合は、選択したメーカーのショートインプラントの残存率と成功率を確認することが臨床医に望まれます。
短い欠損スペース、重要な学習ポイント:2歯欠損の短い欠損部において、適切な補綴装置の設計を選択するために、臨床状況を注意深く評価する必要があります。インプラントの適切な本数と直径を定義するために、近遠心スペースを徹底的に評価するべきです。カンチレバーの補綴的原則には、いくつかの長所と短所があります。臼歯部領域において3歯欠損の短い欠損部において、3本の欠損補綴をするのには一般的に2本のインプラントで十分です。カンチレバーを伴う固定性補綴装置の使用によって、骨造成の必要性を回避できます。ショートインプラントは代替治療法です。
次のセクションでは、3歯以上の欠損領域として定義される拡張された欠損スペースに焦点を当てます。これらの臨床状況では、臨床医は適切な数のインプラントを選択し、事前に決定された補綴計画によってそれらのインプラントを埋入する必要があります。
前歯部領域で4歯欠損がある状況では、インプラント支持型補綴装置で4歯を補綴するのには、一般的に2本のインプラントで十分とされています。1つの治療オプションは、隣在歯に隣接してインプラントを埋入し、固定性補綴装置で欠損歯を補綴することです。この例としては、中切歯および側切歯を補綴するために側切歯の位置にインプラントを埋入しています。別のオプションは、中切歯の位置にインプラントを埋入して、カンチレバー固定性補綴装置を用いて欠損歯を補綴するというものです。更に別のオプションは、片方のインプラントを側切歯部に埋入し、もう片方を反対側の中切歯部に埋入することです。それからカンチレバーポンティックを使用してもう片方の側切歯を補綴します。したがって、4歯欠損と2本のインプラントのこの構成では、いくつかのオプションが可能です。インプラントを埋入する位置の決定は、利用可能な骨量の注意深い評価と補綴計画に基づいています。
4本のインプラントを使用した設計原則では、4つの単冠が可能です。しかしながら、この治療オプションには大きな欠点があります。まず、4本のインプラントを埋入する時、天然歯-インプラント間およびインプラント間の最小距離を考慮する必要があります。これは複雑な臨床手技をもたらします。そして、これらの考慮事項を念頭においても、審美的な結果、例えばクラウン間の乳頭の存在などが損なわれてしまいます。したがって、この補綴デザインは通常推奨できません。
臼歯部領域での大きな欠損部でのインプラントの構成は、補綴設計によって異なります。最初のステップは、補う歯数と、実際に欠損している全ての歯を補うかどうかを決定することです。全ての欠損歯を補う必要はないため、すべての症例を個別に評価する必要があります。それゆえ、補綴計画はその臨床状況にあわせて作成する必要があります。3つの可能性は以下の通りです。1. 短縮歯列目的の一部としてのみの小臼歯咬合 2. 第一大臼歯および小臼歯の補綴 3. 第二大臼歯および第一大臼歯、小臼歯の補綴。最初の2つのオプションの構成原則は、前の学習目標でも説明したように、短めの臼歯部欠損の場合と同じです。したがって、この学習目標は、臼歯部の4ユニットの補綴のための構成原則に焦点を当てます。
インプラントの数と位置は、近くの骨の解剖学的構造や欠損などの局所的な制限要因とともに、補綴計画によって異なります。補綴計画にはワンピースの固定性補綴装置や、シングルユニットあるいは個別のシングルユニットとマルチユニットの固定性補綴装置を組み合わせたセングメント化された代替案が含まれる可能性があります。局所的要因には、例えば上顎洞、下顎管および/またはオトガイ孔、そして利用可能な骨量によって課せられる解剖学的制限が含まれます。
4ユニットの固定性補綴装置を支持するための2本のインプラントを用いたインプラント構成の例をここで示します。インプラント部の上顎洞の下や、下顎管やオトガイ孔の上に十分な骨量が存在する場合、図に示すように第一小臼歯と第二大臼歯部にインプラントを埋入できます。この3番目の例では、オトガイ孔の位置によって、第一小臼歯にインプラント埋入できないというバリエーションが見られます。次に、前方のインプラントを第二小臼歯部に埋入し、第一小臼歯を前方カンチレバーユニットで補綴することもできます。
4ユニットの補綴を支持するために3本のインプラントを使用することで、補綴装置をセグメント化できます。ここでは、シングルユニットと3ユニット固定性補綴装置を別々に使用した構成例を示します。下顎での最初の例では、3ユニットの固定性補綴装置インプラントポジションがオトガイ孔を避けて、第二大臼歯が分離しているため口腔衛生がしやすくなっています。上顎での2つ目の例では、別々のシングルユニットが第一小臼歯を補綴しており、3ユニット固定性補綴装置は移植された第二小臼歯と第二大臼歯部において2本のインプラントの連結がしやすくなっています。
4本の臼歯欠損補綴は一般的に2-3本のインプラントで支持されて達成されます。4本のインプラントを使用するとインプラント間の推奨距離を維持するのが複雑になり、補綴処置が複雑になります。また全体的なコストも大きくなります。したがって、代替案には、3ユニットのみを補綴し、短いカンチレバーユニットを介して反対側の咬合接触を提供するというものがあります。
広範囲の欠損スペース、重要な学習ポイント:広範囲の臼歯部欠損スペースにおいて全ての欠損歯を補う必要は必ずしもありません。インプラントの位置は解剖学的制限と残存骨量とともに補う歯の数に基づいて、補綴計画によって決定されます。4歯欠損の前歯部領域におけるインプラント構成では、一般に2本のインプラントで十分です。最大4歯欠損の臼歯部領域におけるインプラント構成では、一般に2-3本のインプラントで十分です。
次に無歯顎の顎堤に焦点を当てましょう。無歯顎の顎堤は、固定性インプラント支持型補綴装置によって補綴することができます。インプラントを埋入する前に、診断ツールを使用して徹底的な治療計画を立てる必要があります。治療計画によると、インプラントの本数を定義し、顎堤での正しい位置に割り当てる必要があります。
無歯顎の顎堤の設計原則は、フルアーチのワンピース固定性歯科補綴装置です。この設計では、4-6本のインプラントが必要です。ショートアーチやカンチレバーの使用などの代替の補綴原則によってインプラントの使用本数を減らすことが可能です。遠心のインプラントはストレートもしくは傾斜させてもよいでしょう。骨の近心そして口腔内に向かって遠心に傾斜させたインプラントはカンチレバーを回避するか、カンチレバーの長さを短くし、補綴装置の追加の支持を提供するのに役立つ場合があります。
フルアーチのブリッジを支持するのに最小限のインプラントの本数は4本です。4本のインプラントのみを使用する場合、これは常にショートアーチの補綴設計になります。4本のインプラントは理想的に等間隔に配置されるべきであり、ほとんどの場合、側切歯と第一もしくは第二小臼歯の部位です。遠心のインプラントは、ストレートもしくは解剖学的構造を回避するために傾斜させることができます。
6本のインプラントの設計構成により、フルアーチのワンピース固定性補綴装置は、アーチに分散された12ユニットで構成されます。インプラントの位置の選択は、補綴計画に準拠しながら、可能性のあるインプラント部位で利用可能な骨の量を考慮に入れる必要があります。一般的な原則として、審美領域において隣接するインプラントを避けることが望ましいとされます。左の例では、上顎のフルアーチワンピース固定性補綴装置を示しており、前歯部インプラントは側切歯部位に埋入されており、臼歯部インプラントは第一小臼歯と第一大臼歯に位置しています。下顎のフルアーチワンピース固定性補綴装置を示す右の画像では、インプラントは犬歯と第一小臼歯と第一大臼歯部に埋入されています。
上顎では、上顎洞の寸法によって骨造成なしで第一大臼歯部にインプラントを埋入できないことがしばしばあります。その結果、前歯部領域でのインプラント埋入は、しばしば適応されなければなりません。この例では、インプラントは中切歯、犬歯、および第二小臼歯の部位に埋入されています。したがって、第一大臼歯はカンチレバーとして設計されています。
状況によっては、セグメント化された補綴装置が必要になる場合があります。この理由には、患者の好み、メンテナンスや修理のために短いセグメントを簡単に撤去する必要性、または一定期間にわたってセグメントを徐々に置換していく治療計画が含まれる場合があります。セグメント化された補綴装置が無歯顎において計画された場合、通常より多くのインプラントが必要となります。上顎では8本そして下顎では6本のインプラントが使用されるのが一般的です。両顎において、インプラントは3-4つの短いスパンでのインプラント支持型固定性補綴装置を設計できるように分散されています。上顎では、インプラントは中切歯、犬歯、第一小臼歯および第一大臼歯部に埋入されます。下顎ではインプラントはフルアーチのワンピース固定性歯科補綴装置と同じ位置に埋入されます。十分な骨量が利用可能かどうかと解剖学的構造への近接具合によって、インプラントの位置と個々の固定性補綴装置の長さを変えることができます。
無歯顎、重要な学習ポイント:カンチレバーまたはショートアーチの補綴原則によって無歯顎における固定性インプラント補綴装置のインプラント本数を減らすことができます。さらに骨造成を回避できる可能性があります。傾斜埋入は治療の選択肢である。無歯顎でのセグメント化された補綴設計には、より多くのインプラントとこれらのインプラントの戦略的な配置が必要です。
固定性歯科補綴装置のためのインプラント構成、モジュール概要:1歯スペースにおいては、インプラントの寸法とタイプを定義するためにそのスペースを注意深く評価する必要があります。2歯欠損の短い欠損部は、2本のシングルインプラントクラウンあるいはカンチレバーを伴う1本のインプラントによって補綴することができます。3歯欠損の臼歯部の欠損部は2本のインプラントと1本の固定性補綴装置で補綴されるべきです。カンチレバーの設計が可能である場合もあります。4歯欠損を伴う前歯部の大きな欠損スペースは2本のインプラントとポンティックまたはカンチレバー設計の固定性補綴装置で補綴されるべきです。臼歯部での大きな欠損スペースの場合、一般にワンピースまたはセグメント化されたデザインを使用すると2-3本のインプラントで十分です。無歯顎はワンピース固定性補綴装置または3-4のセグメント化された固定性補綴装置で補綴できます。